いちごが店に並び始めるのは11月ごろ。クリスマスケーキの季節には、もう当たり前のように売っています。
そのせいで「いちごは冬の果物になった」と思われがちですが、これは正確ではありません。 変わったのは売られ始める時期であって、入荷がいちばん多いのは今も3月、そして価格が底になるのは4〜5月です。
つまり12月に買ういちごは、1年でいちばん高い。総務省の統計では、2021年から2025年まで5年続けて12月が最高値でした。同じものを春まで待てば、3割ほど安く買えます。
結論から言うと、たくさん食べたいなら3月から5月。12月は「その時期だから」買っているだけです。
この記事では、出回りと価格の動き、粒の大きさと甘さの関係、洗ってはいけないタイミング、いちご狩りの料金差までを、新生活を始めたばかりのミナミさんとハル先輩の会話で整理していきます。

売られ始める時期と、量が出る時期は別ものです
こんな方に読んでほしい記事です
12月にいちごを買って、高いと思いつつ毎年買っている
大きい粒を選べば甘いと思っている
買ってきてすぐ洗って冷蔵庫に入れている
すぐに傷ませてしまう。気づくと白いカビが出ている
この記事の前提
出回り時期と価格は、その年の天候で動きます。この記事は公的な統計に出ている傾向の整理です。価格は東京都区部の小売物価統計、入荷は東京・大阪の中央卸売市場の数字で、地域によって事情は変わります。品種や産地の主力も入れ替わるので、「〇〇県といえば△△」で覚えないほうが安全です。
いちごって冬の果物ですよね。クリスマスのイメージが強くて。
売られ始めるのが冬になった、というのが正確です。 市場への入荷がいちばん多いのは、東京も大阪も今でも3月なんです。
12月は少ないんですか。
出始めたばかりですからね。少ないところにクリスマスの需要が集中するので、当然、値段は上がります。1年でいちばん高いのが12月です。
じゃあ、いつ買えば。
量なら3月、値段なら4月から5月。 少しずれます。急がないなら、春まで待つのがいちばん得です。
結論:量のピークは3月、安いのは4〜5月

ハウス栽培で「出回り」が半年前倒しになりました
11月出回り始める。量は少なく、値段は高い
12月1年でいちばん高い。 クリスマスの需要が集中する
1月〜2月少しずつ下がってくる
3月入荷のピーク。 品種も選べる
4月〜5月価格の底。 いちご狩りの料金も下がる
6月〜10月国産はほぼ市場から消える
量のピークと、安さのピークは1〜2か月ずれる
| 時期 | 出回り | 量 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 11月 | 始まる | 少ない | 高い |
| 12月 | 本格化 | まだ少ない | 1年でいちばん高い |
| 1〜2月 | 続く | 増えていく | 下がってくる |
| 3月 | 続く | 入荷のピーク | さらに下がる |
| 4〜5月 | 続く | 多い | 底 |
| 6〜10月 | ほぼ無い | ほぼ無い | ―(業務用の輸入が中心) |
農畜産業振興機構の資料では、東京都中央卸売市場のいちごの入荷は「ピークは3月で、5月まで入荷が続く」、大阪中央卸売市場も「3月のピークに向けて全体の数量は増えていく」とされています。卸売価格については「出荷の増える1月からは下落し、4〜5月に底となり、7〜10月にかけて上昇する傾向」と説明されています。
つまりいちばん量が出るのは3月、いちばん安いのは4〜5月です。ここが1〜2か月ずれます。
12月は、最安月より3割ほど高い
総務省の小売物価統計調査(東京都区部・1kgあたり)では、2021年から2025年まで5年連続で12月が最高値でした。最安の月は年によって4月か5月ですが、12月と比べると26.9〜35.9%安いという結果です。例えば2025年は12月が3,128円、5月が2,042円。同じものを買うなら、待つほうが得です。
この統計は12月から5月しか調べていない
小売物価統計調査のいちごは、6月から11月が調査対象外です。「当該市町村で調査を行わない、又は調査期間の定めがあるため調査を行わない」という扱いになっています。国産のいちごが夏に市場から消えることが、統計の作り方そのものに表れているわけです。なお上の数値は東京都区部のもので、月別の全国平均は公表されていません。
なぜ冬から出るのか
いちごは本来、秋に苗を植えて冬を越し、5〜6月に実る植物です。それを人の手で半年前倒ししているのが、いまの「」です。
夏の暑い時期から涼しく日が短くなると花芽ができる、といういちごの性質を利用して、人工的に低温や暗い環境を作り、時期を早めています。技術で前倒ししているだけで、いちごの本来の実り時期が変わったわけではありません。
「旬が冬に変わった」ではない
俳句の世界では、いまも「苺」は初夏の季語です。植物としての結実期は5〜6月、入荷のピークは3月、価格の底は4〜5月、そして店頭に並び始めるのが11〜12月。これらは別の話です。「昔は春が旬だったが今は冬が旬になった」という説明は、量のデータと合いません。
ハウスで作れば、いつでも採れるものだと思っていました。
夏はほぼ採れません。 6月から10月は国産がほとんど市場から消えて、その時期に出回るのは業務用の輸入ものが中心です。ケーキ屋さんが夏に困るのはそのためです。
一年中あると思っていました。
スーパーに並んでいるのは、だいたい11月から5月までです。物価の統計ですら、いちごは12月から5月しか調べていません。
選び方:大きい粒が甘い、は当たっていない

見るところを間違えると、高いほうを選んで損をします
エフコープ生活協同組合の商品検査センター「りんご館」が、いちごの糖度を実際に測って比べた結果があります(2020年)。思い込みが、かなりの部分で否定されています。
| 比べたもの | 糖度の差 |
|---|---|
| 大きい粒/小さい粒 | 差なし |
| 三角形/丸みのある形 | 差なし |
| つぶつぶ(種のように見える部分)が赤い/そうでない | 差なし |
| ヘタ側/先端(ヘタの反対側) | 先端が1.0〜1.5度高い |
| 買った直後/冷蔵4日後 | 差なし(甘くならない) |
つまり、大きさ・形・つぶつぶの色は当てになりません。 大粒のほうが高いことが多いので、これを基準にすると余計に払うことになります。
この検証について
品種・サンプル数・測定機器は公表されていません。 学術論文ではなく生協の広報記事なので、傾向として読んでください。 ただし「大きさ・形・つぶつぶの色で糖度に大きな違いは見られなかった」という結論は、記事の中ではっきり述べられています。
では何を見るか
| 見るところ | なぜ効くか |
|---|---|
| ヘタの近くまで赤く色づいているか | 着色は熟度の目安。栃木県農業試験場の「とちおとめ」の調査では、70〜80%着色期以降に糖度が上がるとされている |
| ヘタがピンと立ち、緑が濃いか | 鮮度の目安。しおれていれば時間が経っている |
| パックの底 | 潰れや汁が出ていないか。下の段が傷んでいることがある |
いちごは追熟しない
バナナや桃と違い、いちごは収穫したあとに甘くなりません。 これは性質の違いで、いちごは「ノンクライマクテリック型」——収穫後に呼吸が急上昇せず、が起こらない果物に分類されます(農研機構の研究者による解説)。同じ分類にみかん・ぶどう・柿があります。<br>「少し置いておこう」は意味がなく、傷むだけです。上の検証でも、冷蔵で4日置いて糖度は変わりませんでした。買った日がいちばんおいしいと考えてください。
食べる順番の話
先端が甘いということは、ヘタ側から食べると、口の中で甘さが増していくということです。
逆に先端から食べると、最後にいちばん酸っぱい部分が残ります。同じいちごでも、食べる向きで印象が変わります。
大きいほうが甘いと思って、高いパックを選んでいました。
測った結果では差が出ていません。 大きさで値段が変わるのは、見栄えと贈答向けの需要があるからで、味の話ではないんです。
じゃあ小さいほうが得ですね。
自宅で食べるならそうです。贈り物なら大きいほうが喜ばれるので、そこは用途で分けてください。
保存:洗うのは食べる直前
買ってきてすぐ洗うのは、いちばんやってはいけないことです。

パックのまま入れると、下の段から潰れます
洗って保存してはいけない理由
| やってしまうこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 洗ってから冷蔵する | 表面に水分が残り、カビが出やすい状態を自分で作る |
| ヘタを取ってから洗う | 切り口から水が入り、水溶性のビタミンCが失われやすいとされる(農畜産業振興機構)。味も水っぽくなる |
| パックのまま入れる | 重なった部分から潰れる。下の段から傷む |
いちごには、開花のころから灰色かび病の菌が付いていることがあります(花弁や柱頭に感染し、実が育つ過程で侵される)。この菌は20℃前後で湿った状態が続くと一気に増えます。洗って水気が残ったまま保存するのは、その条件を用意してしまうことになります。
正しい順番
①買ったら|洗わずにパックから出す
②並べる|重ならないように、平らな容器へ。キッチンペーパーを敷く
③冷蔵する|野菜室でも冷蔵室でもよい。ヘタは付けたまま
④食べる直前|ヘタを付けたままさっと洗う
⑤水気を拭く|そのあとでヘタを取る
「ヘタを付けたまま洗う」が要点
ヘタを取ってから洗うと、切り口から水が入ります。農畜産業振興機構も「洗う前にヘタをとってしまうとビタミンCが減少しやすく、味も水っぽくなってしまう」としています(いちごで損失量を実測した公的データは見当たらなかったので、断定はできません)。洗う→拭く→ヘタを取る、の順番だけ守ってください。
日持ち
| 保存 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 3〜5日 | 買った日がいちばんおいしい |
| 冷凍 | 1か月程度が目安 | 公的な保存期間の基準はありません。 洗って水気を拭き、ヘタを取ってから。砂糖を少しまぶすと固まりにくい |
食べきれないと分かった時点で、傷む前に冷凍してしまうのが確実です。凍らせたものは生食には向きませんが、ジャムやスムージーに使えます。
買ってすぐ洗っていました。そのほうが後で楽だと思って。
気持ちは分かりますが、カビの条件をそろえているようなものなんです。水気が残ったまま、密閉した容器に入れて、冷蔵庫で数日。菌にとっては都合がよすぎます。
白いカビが出ることがあったのは、そのせいですか。
可能性は高いです。洗わずに、重ねずに、乾いた状態で入れる。 これだけで日持ちがだいぶ変わります。
品種と産地:「〇〇県といえば」で覚えない
主力の品種は入れ替わる
栃木県は1968(昭和43)年産以来、半世紀以上にわたって収穫量が日本一です(2024年産で57年連続)。ただし「栃木といえば、とちおとめ」という覚え方は、もう実態と合っていません。
とちあいかという新しい品種が急速に置き換わりました。栃木県の資料によれば、令和7(2025)年産で作付面積は397ha、県全体の約8割に達しています。とちおとめより収穫が早く始まり、収量も多いのが理由です。
品種の主力は数年で入れ替わる
「〇〇県といえば△△」という覚え方は、数年で古くなります。 実際、栃木の主力はとちおとめからとちあいかへ交代しました。売り場で品種名を見るほうが確実です。
産地は「リレー」ではなく、東西で分かれている
「〇月は△△県産が出回る」という産地リレー的な説明を見かけますが、いちごに関してはあまり当てはまりません。
市場ごとに並ぶ産地が違うためです。
| 東京の市場で多い産地 | 大阪の市場で多い産地 | |
|---|---|---|
| 11月 | 栃木・茨城・福岡 | 長崎・熊本 |
| 12月 | 栃木・茨城・福岡 | 長崎・熊本・福岡 |
| 3月 | 栃木・福岡・茨城 | 長崎・熊本・福岡 |
| 5月 | 栃木・茨城・静岡 | 長崎・佐賀・香川 |
月ごとの入れ替わりは小さく、東西の棲み分けのほうがずっと大きいのが分かります。関東では栃木・茨城、関西では長崎・熊本・福岡が、シーズンを通して並びます。
つまり住んでいる場所によって、店で見かける品種が最初から違います。 「あの品種を食べてみたい」なら、通販を使うことになります。
収穫量の多い都道府県
| 順 | 都道府県 | 収穫量 |
|---|---|---|
| 1 | 栃木 | 25,700t |
| 2 | 福岡 | 14,400t |
| 3 | 熊本 | 11,100t |
| 4 | 愛知 | 10,500t |
| 5 | 静岡 | 10,100t |
| 6 | 茨城 | 9,970t |
| 7 | 長崎 | 9,600t |
農林水産省の作況調査(野菜)、令和6(2024)年産。全国の収穫量は156,600トンです。6位と7位は年によって入れ替わります(令和5年産は長崎が6位、茨城が7位でした)。
実家では見たことがない品種が、こっちのスーパーにありました。
東と西で並ぶ産地が違うからです。関東は栃木と茨城、関西は長崎・熊本・福岡。引っ越すと、いちご売り場の顔ぶれが変わります。
全国で同じものが売られているわけではないんですね。
果物は特にそうです。輸送の距離がそのまま値段と鮮度に効くので、近い産地のものが並びます。
いちご狩りと、通販・ふるさと納税

買い方によって、値段の動き方が違います
いちご狩りは、時期で料金が大きく変わる
いちご狩りは12月中旬ごろから始まり、5月から6月初めまで続きます。そして料金は、後半になるほど下がります。
栃木県小山市の観光農園「いちごの里」の公表料金では、同じ「とちあいか狩り」(40分食べ放題・平日)で、4月5日までが2,420円、5月7日以降が1,320円。45%安になります。<br>ただし下げ幅は農園によって差があります。茨城県鉾田市の深作農園は2,100円→1,700円で、約2割です。
| 時期 | 料金 | 混み具合 |
|---|---|---|
| 12月〜3月 | 高い | 混む |
| 4月 | 下がる | やや落ち着く |
| 5月以降 | いちばん安い | 空いている |
安さと味は、はっきりトレードオフです
福岡県農業総合試験場が「あまおう」の果実品質を収穫時期別に調べた研究では、糖度(Brix)は1月中下旬に最も高く、11月と3月以降は低いという結果でした。甘味と酸味のバランス(糖酸比)も1〜2月が最高で、3月下旬以降は良食味の目安を下回ったとされています。<br>安く量を食べたいなら5月、味を優先するなら1〜2月。 予約は早い時期ほど埋まります。
通販・ふるさと納税
- 1いつ届くか。 ふるさと納税は「〇月〜〇月頃発送」という幅のある指定が多く、日付を選べないことがある
- 2受け取れる日時を指定できるか。冷蔵で届くので、置いておけない
- 3品種・産地・粒の大きさが書かれているか
- 4傷んで届いたときの連絡先
届いたらすぐ冷蔵する
いちごは冷蔵で届きます。受け取ったまま常温に置くと、その日のうちに悪くなります。 受け取れる日時を指定できるか、必ず確認してください。
傷んで届いたら、写真を撮ってすぐ連絡
ふるさと納税なら寄付先の自治体へ、通販なら販売店へ。傷んだ箇所と梱包の状態を写真に残してから連絡してください。困ったときは消費者ホットライン188(局番なし)でお住まいの消費生活センターにつながります。
ふるさと納税でいちごを頼もうと思っていました。
いい選択ですが、いつ届くかを先に見てください。 「〇月頃」としか書いていないことが多く、旅行中に届いて受け取れなかった、という話がよくあります。
冷蔵だと、置き配もできないですよね。
できません。受け取れる日が読めないなら、スーパーで買うほうが結局おいしいです。4月から5月なら値段も下がっていますから。
まとめ:待てるなら、春まで
要点をもう一度まとめます。
時期
- いちごは「冬の果物になった」のではなく、冬から売られるようになっただけ
- 入荷のピークは3月、価格の底は4〜5月。 1〜2か月ずれる
- 12月が1年でいちばん高い。 量が少ないところにクリスマスの需要が集中する
- 12月は最安月より26.9〜35.9%高い(東京都区部、2021〜2025年)
- 6〜10月は国産がほぼ市場から消える。小売物価統計もこの時期は調査していない
選び方
- 大きさ・形・つぶつぶの色は、甘さと関係がない(実測で差なし)
- 見るのはヘタの近くまで赤いかとヘタの緑が濃いか
- 先端(ヘタの反対側)がいちばん甘い。 ヘタ側から食べると甘さが増していく
- 追熟しない。 置いても甘くならず、傷むだけ
保存
- 洗わずに保存する。 水気が残るとカビの条件になる
- ヘタを付けたまま洗い、拭いてからヘタを取る(切り口から流れ出る)
- パックのまま入れない。重ならないように並べる
- 冷蔵で3〜5日、冷凍で約1か月
品種と産地
- 主力の品種は数年で入れ替わる。 「〇〇県といえば△△」で覚えない
- 産地はリレーではなく、東西の棲み分け。住む場所で並ぶものが違う
買い方
- いちご狩りは5月以降がいちばん安い(同じ農園・同じ品種で45%安の例あり)。ただし糖度のピークは1月中下旬(福岡県農業総合試験場「あまおう」の調査)
- 通販・はいつ届くかを先に確認。冷蔵なので置いておけない
「春まで待つ」「洗わずにしまう」「ヘタの下まで赤いか見る」。この3つですね。
それで十分です。いちばん効くのは時期ですね。同じものが3割ほど安くなるので、待てるなら待つ。
クリスマスに食べたい気持ちもありますが。
それはそれで構いません。 ただ「高い時期に買っている」と分かって買うのと、知らずに買うのとでは違います。春にもう一度買えばいいんです。4月から5月がいちばん安いですから。
季節の食べ物は、買う時期で値段も味も変わります。あわせてどうぞ。
- 新米はいつから? — 出回り時期と保存の考え方
- かに通販の買いどきはいつ? — 年末に集中する食材の買い方
- 母の日はいつ? — 春の贈り物。冷蔵品の受け取りの話も
- 3月・4月に読むものは 3月の一覧 / 4月の一覧 にまとめています



