お中元でいちばん怖いのは、作法を間違えることではありません。一度贈ったら、抜けられなくなることです。
そして、これは気のせいではありません。「お中元」という表書きそのものが、来年も贈るという意味を持っています。
日本郵便が運営する通販サイトの説明にこうあります。「ただし、今年だけ特にお世話になった相手に一度限りの感謝を伝えたいという場合は、来年以降も継続して贈る意味合いを持つ『お中元』ではなく、表書きを『御礼』や『感謝』などにして届ける方法がスムーズです」。
つまり始め方を選び間違えると、降り方が無くなる。 この記事は、そこから書きます。

表書きを「お中元」にするか「御礼」にするかで、来年が変わります
そもそも、贈っている人は多数派ではありません
ある民間調査(2022年、回答者10,263人)では、その年にお中元を贈った人は約35%でした。しかも贈った相手の最多は「その他親戚」で41.9%(複数回答)。お中元はすでに「取引先の儀礼」ではなく「親戚づきあい」の慣習に寄っています。「贈らないと失礼」と身構える必要は、思っているより小さいです。
こんな方に読んでほしい記事です
今年だけお礼をしたいが、毎年続けたいわけではない
先生・お医者さん・公務員の知人に贈っていいのか分からない
やめたいのに、やめ方が分からない
もらったので同じくらいの物を返そうと思っている
生ものを贈ろうとしている
この記事の前提
お中元の作法には公的な決まりがありません。 時期の区分も相場も、根拠は百貨店やギフト事業者の説明です。この記事では誰がそう言っているのかを毎回はっきりさせます。 一方、公務員への贈答と宅配便の扱いには法令・公的資料があります。そこは条文で書きます。地域や家によってならわしが違う点は、最後まで残ります。
会社の上司にお中元を贈ろうか迷っています。
「今年だけ」なのか「これから毎年」なのかを、先に決めてください。 そこでが変わります。「お中元」は、来年も贈る前提の言葉なんです。
一度きりにしたい場合は。
表書きを「御礼」にします。 店で「御礼で」と言えば通じます。これだけで、翌年からの気まずさが消えます。
時期:関東7月・関西8月は「決まり」ではない
5月百貨店のオンライン受付が始まる(早期割引あり)
6月早期特典はここまで。 店頭の特設会場も開く
7月関東などの一般的な時期(1日〜15日)
8月関西などの一般的な時期(〜15日)。 九州は1日〜15日
9月〜4月お中元の時期ではありません
この区分を決めた公的な文書はありません
「関東は7月1日〜7月15日、関西は7月15日〜8月15日」。よく見る説明ですが、これを定義した公的な文書は確認できませんでした。 書いているのは百貨店・ギフト事業者と、日本郵便が運営する通販サイトです。<br>ただし総務省統計局の分析記事(2017年)には「お中元のシーズンは、関東や東北ではほぼ終わりましたが、そのほかの北海道や九州などでは旧盆の8月中旬までのようです」という一文があります。定義ではなく観察ですが、国の文書に地域差の記述が無いわけではありません。
| 時期 | 地域(日本郵便運営の通販サイトによる分類) |
|---|---|
| 7月1日〜7月15日 | 東北、関東、北陸の一部 |
| 7月15日〜8月15日 | 北海道、北陸の一部、東海、関西、中国、四国 |
| 8月1日〜8月15日 | 九州 |
| 旧暦7月13日〜15日 | 沖縄 |
「盆が7月と8月に分かれた」ところまでは公的資料で確認できます
明治の改暦後、盆を新暦7月に行う地域と、1か月遅らせて8月に行う地域に分かれました。これは自治体の資料でも確認できます(農作業が忙しかった、法律に従った、など理由が挙げられています)。ただし「だからお中元も7月と8月に分かれた」という接続は、事業者の説明です。分けて受け取ってください。<br>沖縄については、県公文書館が旧盆(7月13〜15日)を解説し「この三日間、お中元を携えて親族を訪ね」と書いています。ここは公的資料に根拠があります。
迷ったら、7月上旬着にする
区分が決まりでない以上、「早すぎる」より「遅すぎる」ほうが困ります。 遅れると表書きを変える必要が出るためです(後述)。相手の地域が分からなければ、7月上旬に届くようにしておけば安全です。<br>関西や九州には少し早い到着になりますが、「お中元」の表書きのまま贈れます。 逆に8月に合わせて外すと、表書きを変えることになります。
売り手の側は、はっきり前倒ししています
2026年の百貨店の受付開始日を並べると、こうです。受付の形(オンラインか店頭か)が各社で違うので、そこも書き添えます。
| 百貨店 | 受付の開始 | 早期特典 |
|---|---|---|
| 大丸松坂屋 | オンライン 5月8日 | オンラインの優待ギフトが15%OFF(別枠で20%OFFもあり) |
| 高島屋 | オンライン 5月8日 | ― |
| 東急百貨店 | オンライン 5月15日 | ― |
| 阪急百貨店 | ネット 5月20日 | ― |
| 日本橋三越本店 | ギフトセンター 6月3日(オンラインの早期申込は6月7日まで) | エムアイポイント1,500pt+送料値引クーポン |
| そごう・西武(池袋本店) | 店頭 6月1日 | 6月30日まで会員5〜15%OFF |
| 伊勢丹新宿店 | 店頭 会員先行6月3日/一般6月5日 | 会員先行そのもの |
確認できた範囲では、早期特典は6月末で終わります(大丸松坂屋のキャンペーンは7月1日午前0時まで、そごうの早期優待は6月30日まで)。つまり百貨店は「6月中に注文させる」設計です。<br>受付日と特典の内容は毎年変わります。 上の表は2026年のものなので、贈る年に各社のサイトで確認してください。
注文の時期と、到着の日は別ものです
5月に注文しても、届く日は選べます。割引を取りたいなら早く注文し、到着は7月上旬に指定するのがいちばん得です。逆に、特典に釣られて到着まで6月上旬にしてしまうと、伝統的な時期より2か月早く届くことになります。三越も「最近では6月下旬から贈り始める方も多くなりました」と書いていますが、これは同社の観察であって統計ではありません。
時期を外したら、表書きを変える

立秋を境に「暑中」から「残暑」に変わります
| 届く時期 | 表書き | 目上の相手には |
|---|---|---|
| お中元の時期内 | 御中元/お中元 | 同じ |
| 時期を過ぎて立秋の前日まで | 暑中御見舞 | 暑中御伺 |
| 立秋から8月下旬ごろまで | 残暑御見舞 | 残暑御伺 |
目上の相手には「御見舞」ではなく「御伺」を使う、というのは各社に共通しています。理由の説明は分かれていて、大丸松坂屋は「『御見舞』は相手よりも上の立場で使う言葉とされるため」、三越伊勢丹(法人向け記事)は「謙譲語である『伺う』を使うことで敬意を表せるため」としています。
「立秋は8月8日」で覚えると、ずれる年があります
立秋の日は年によって変わります。国立天文台の暦要項では、2025年も2026年も8月7日でした。<br>日本郵便の公式ページは暑中見舞いを「小暑(7月7日頃)〜立秋の前日(8月7日頃)」、残暑見舞いを「立秋(8月8日頃)〜」としています。同じページの中で、立秋の前日と立秋がどちらも「8月7日/8日頃」になっていて噛み合いません。 「頃」がある以上まちがいとは言えませんが、締切をきっちり守りたいなら、その年の暦要項で確認してください。
| 年 | 立秋 | 暑中見舞いの締切(立秋の前日) |
|---|---|---|
| 2027年 | 8月8日 | 8月7日 |
| 2028年 | 8月7日 | 8月6日 |
| 2029年 | 8月7日 | 8月6日 |
| 2030年 | 8月7日 | 8月6日 |
| 2031年 | 8月8日 | 8月7日 |
| 2032年 | 8月7日 | 8月6日 |
出典と注意
国立天文台の値です。2027年までは官報に掲載された「暦要項」と一致を確認しました。暦要項は毎年2月に翌年分が発表されるため、2028年以降は同じ国立天文台の長期計算値です。<br>なお「暑中」の始まりは、小暑(7月7日ごろ)とする説、梅雨明けとする説、夏の土用入りとする説があり、公式のあいだで割れています。 終わり(立秋の前日)は一致しています。
関西の親戚には8月に送ればいいんですね。
一般的にはそうですが、決まりではありません。 公的な文書は無くて、百貨店がそう案内しているだけです。だからその家のやり方が優先します。
分からないときは。
7月上旬着にしておけば安全です。関西や九州には少し早いですが、「お中元」の表書きのまま贈れます。 遅れるほうが面倒で、表書きを変えることになります。
贈ってはいけない相手がいます
ここは作法の話ではありません。法令の話です。
まず「利害関係」があるかを考える
国家公務員倫理規程(平成12年政令第101号)第3条第1項第1号は、こう定めています。
条文(e-Govの原文)
利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。<br>——これを禁止行為として挙げています。
例外は第3条第2項に7つだけあります。宣伝用の物品、立食パーティーでの記念品、職務訪問時の物品使用、会議での茶菓、などです。中元・歳暮・社交儀礼は、この7つに入っていません。
「お中元だから社交儀礼としてセーフ」の根拠はありません
人事院の「論点整理・事例集」と「質疑応答集」を通して探しましたが、「中元」「歳暮」という語は一度も出てきません。 祝儀(13件)や香典(17件)については「通常の社交儀礼の範囲内なら可」という問答が多数あるのに、中元・歳暮には言及がない。つまり許容されるという公的な説明が存在しません。
ただし、条文の射程は限られています
ここを誤解すると、必要以上に怖がることになります。3つの限定があります。
| 限定 | 中身 |
|---|---|
| ①一般職の国家公務員だけ | 倫理法第2条第1項が対象を「一般職に属する国家公務員」と定めています。公立学校の教職員も公立病院の職員も地方公務員で、この規程の対象外です(別の根拠があります。次項) |
| ②「利害関係者から」だけ | 利害関係者は第2条の限定列挙で、許認可・補助金・立入検査・不利益処分・行政指導・契約などの関係にある事業者等または特定の個人を指します。事業を行っていない一般の個人が知人や親戚の公務員に贈る場面は、通常ここに入りません |
| ③私的な関係には例外がある | 第4条。人事院の質疑応答集は「大学時代の友人は第4条第1項の『私的な関係』に当たるので、親しい友人から社会通念上過剰でない額の香典を受け取ることは差し支えない」と答えています |
それでも、仕事のつながりがあるなら贈らない
条文が禁じていなくても、判断を相手に押しつけることになります。 相手は「これは利害関係にあたるか」を考え、迷えば倫理監督官に相談する手間を負います。少しでも仕事上のつながりがあるなら、贈らないのが安全です。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 倫理規程 第3条 | 利害関係者からの贈与は、金額にかかわらず原則禁止 |
| 倫理規程 第4条 | 私的な関係があっても、疑惑・不信を招くおそれがないと認められる場合に限る。判断できなければ倫理監督官に相談 |
| 倫理規程 第5条 | 利害関係者でなくても「社会通念上相当と認められる程度を超えて」利益を受けてはならない |
| 倫理法 第6条 | 本省課長補佐級以上は、事業者等から1件5,000円を超える贈与を受けたとき、四半期ごとに報告書を提出(個人からの贈答は報告対象外) |
公立学校の先生には、明文の根拠があります
東京都教育委員会の「教職員の服務に関するガイドライン」(令和8年4月改訂版)は、利害関係者をこう定義しています。
原文
利害関係者(児童・生徒、保護者並びに職員の職務(許可、検査、補助金の交付、各種選考、工事の請負、各種委託、物品の購入、教科書採択、教材選定等)に利害関係を有する団体及び個人)と、会食、スポーツ、旅行等を共にしたり、金銭、物品等を受け取ったりする行為は行わない。
保護者は、業者と並んで利害関係者の先頭に名指しされています。 公立学校の先生に贈らないほうがよい理由は、推論ではなく明文です。
同じガイドラインには、次の記述と実際の処分事例も載っています。
原文と処分事例
どのような場合であっても、利害関係者と会食を共にして接待を受けたり、タクシー等に同乗したり、金品を受け取ったりしてはなりません。<br>利害関係者とは、現在自分が担当している業務に直接関係する者のみならず、自分自身が業務に直接関わらない相手や、過去に関係を有していた者も含まれます。<br>——処分事例:「3年の間に、自宅において、教科書発行者である会社から送付された物品を4回受け取った。(戒告)」
私立学校や習い事の先生は別
上のガイドラインは東京都の公立学校のものです。私立学校や習い事の先生は公務員ではないので、この規程の対象外です。ただし学校ごと・教室ごとの方針は別にあります。
医師
公立病院・国立病院機構・国立大学法人の医師は、刑法上の公務員(またはみなし公務員)です。国立大学法人法第19条、独立行政法人国立病院機構法第14条に「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」という規定があります。
実際の運用も、病院が公表しています。
| 病院 | 公表している方針 |
|---|---|
| 国立がん研究センター東病院 | 「職員への謝礼は固くお断りいたします。」 |
| 埼玉県立がんセンター | 「県立病院職員は、県民全体の奉仕者であり…地方独立行政法人埼玉県立病院機構職員倫理規程により、患者様やご家族の方などから、お心付けなどを受け取ることが禁じられ」ています |
患者からの贈答が刑事事件になった例は見つかりませんでした
医師の収賄事件として出てくるものは、すべて医療機器・医薬品業者からの贈賄です。とはいえ病院側が「受け取れない」と公表している以上、渡せば断る手間をかけさせることになります。
贈った側も、刑法の対象になりうる
| 条文 | 対象 | 罰 |
|---|---|---|
| 刑法 第197条(収賄) | もらった側 | 5年以下の拘禁刑(請託を受けたときは7年以下) |
| 刑法 第197条の3(加重収賄) | もらった側 | 1年以上の有期拘禁刑 |
| 刑法 第198条(贈賄) | 贈った側 | 3年以下の拘禁刑、または250万円以下の罰金 |
ただし、対象は「賄賂」です
198条が罰するのは賄賂を供与した者です。賄賂とは、公務員の職務に関する対価として渡されるもの(刑法197条「その職務に関し」)。職務と結びつかない純粋な社交儀礼は、これに当たりません。<br>問題になるのは「頼みごとがある相手に贈る」ときです。そして贈賄は、渡した時点だけでなく申し込みや約束をした時点でも成立します。
会社が「お中元お断り」を出していることがある
キーワードは「虚礼廃止(きょれいはいし)」です。「お中元・お歳暮廃止のお知らせ」を自社サイトで公表している企業が実際にあります。
- 1相手が公務員・公立学校の教職員・公立病院の職員でないか
- 2公務員なら、仕事上のつながりがあるか(あるなら贈らない)
- 3相手の会社が贈答を辞退していないか(サイトの「お知らせ」に出ていることがある)
- 4会社として贈る場合、自社の規程で禁じられていないか
子どもの担任の先生にお中元を、と考えていました。
やめておいてください。 東京都のガイドラインは、保護者を利害関係者として名指ししたうえで「金銭、物品等を受け取ったりする行為は行わない」と書いています。受け取れば処分の対象になりえます。
断らせるのも悪いですね。
そうなんです。相手に仕事を増やすことになる。 感謝を伝えたいなら、手紙にしてください。 物でなければ、この問題は起きません。
親戚に公務員がいるのですが、その人も駄目でしょうか。
そこは違います。 倫理規程が禁じているのは「利害関係者から」の贈与で、事業をしていない親戚は普通そこに入りません。私的な関係の例外もあります。仕事のつながりが無いなら、気にしすぎなくて大丈夫です。
やめ方と、断り方

表書きひとつで、来年の意味が変わります
始める前に、降り方を決めておく
もう一度、日本郵便が運営する通販サイトの説明を引きます。
一度きりにしたいなら、表書きは「御礼」
ただし、今年だけ特にお世話になった相手に一度限りの感謝を伝えたいという場合は、来年以降も継続して贈る意味合いを持つ「お中元」ではなく、表書きを「御礼」や「感謝」などにして届ける方法がスムーズです。<br>——つまり「お中元」という4文字が、継続の予告になっているわけです。店で「御礼で」と言うだけで済みます。
| 伝えたいこと | 表書き |
|---|---|
| 今年だけ、特別にお世話になった | 御礼/感謝 |
| これから毎年、季節のご挨拶として | 御中元/お中元 |
| 時期を過ぎてしまった | 暑中御見舞(目上には暑中御伺) |
| 立秋を過ぎた | 残暑御見舞(目上には残暑御伺) |
すでに毎年贈っていて、やめたい
三越伊勢丹のマナー記事のQ&Aは、こう答えています。
「急に止めず、徐々にフェードアウト」
Q:贈るのをやめたいときはどうすればいいですか?<br>A:急に止めず、回数や金額を徐々にフェードアウトするのが一般的。お歳暮のみへ切り替える方法もあります。
歯切れが悪いと感じたなら、それが正しい感想です。 いったん「お中元」で始めると、降りる手続きが用意されていないので、こう答えるしかありません。
①金額を下げる|前年より控えめにする。ここで気づいてもらえることがある
②お中元をやめ、お歳暮だけにする|「年1回」に減らす。これがいちばん角が立たない
③お歳暮もやめる|最後の年に、お礼状で「今後はお気遣いなく」と添える
④年賀状やに切り替える|関係を切るわけではないと伝わる形にする
突然やめると、相手が心配します
毎年届いていたものが来なくなると、「何かあったのか」「気を悪くさせたか」と相手に思わせます。 減らすときは、必ず手紙か連絡を残してください。 物をやめるのと、付き合いをやめるのは別だと伝えるのが要点です。
もらう側として、断りたい
日本郵便が3つの方法を挙げています。
| 方法 | 使いどころ |
|---|---|
| お礼状で伝える | まず礼を述べ、「今後はご遠慮させていただきたい」と添える。いちばん穏やか |
| 電話で伝える | 「季節のご挨拶の品はご遠慮しております。今後はどうぞお気遣いなさいませんように」 |
| 断り状を添えて返送する | 立場上受け取れない場合や、何度断っても送られてくる場合 |
断るときは「付き合いをやめたいわけではない」と必ず添える
日本郵便の説明にも、この一言を入れることが挙げられています。品物を断ると、関係そのものを断られたと受け取られがちです。断るのは物であって、人ではないと明示してください。
立場上、受け取れない場合の返送
公務員については、人事院の事例集に実務が載っています。
事例集より(要旨)
利害関係者から生ものが送られてきたので返送したが、相手が不在で連絡がつかず、配達業者が再度持ってきた——という事例に対し、「一旦返送したことにより、必要な措置を講じたものと考えられるため、速やかに倫理監督官に報告の上、適宜処分して差し支えない」と答えています。<br>つまり返送を試みた記録が残れば足りる、という整理です。
去年からお中元を贈っている取引先があって、正直やめたいです。
お歳暮だけに減らすのがいちばん自然です。年2回を年1回にするだけなので、角が立ちません。
完全にやめたいときは。
最後の年に一言添えてください。 「今後はお気遣いなく」と書いた手紙を入れる。黙って止めると、相手は理由を探します。 そこがいちばん困らせるところです。
もらったとき:お返しより、お礼状が先
お返しの品は要りません
これは百貨店3社とも一致しています。
| どこが | どう言っているか |
|---|---|
| 三越伊勢丹 | 「本来お中元は目上の方に贈るものであることから、お返しとして品物などを贈り返す必要はありません。お礼状でしっかりと感謝の気持ちを伝えることが大切です」 |
| 日本郵便 | 「お中元にお返しをする必要はありません。また、結婚祝いや出産祝いのようなお返しの風習といったものもありません」 |
| 大丸松坂屋 | 「お中元をいただいた際のお返しは必須ではありません」 |
「半返し」という語を使った説明は、確認した範囲では見当たりませんでした。 半返しはもともと(結婚・出産)の慣行です。<br>ただし大丸松坂屋は、どうしても返すなら「いただいた品物の半額から同額以内」が目安としています。高島屋と三越伊勢丹は「同額程度」または「不要」。「必ず半分返す」という決まりは無い、というのが正確なところです。
すぐに同額を返すと、「お断り」の意味になります
これが、この章でいちばん役に立つ話かもしれません。
日本郵便の説明(原文)
取引先や上司など目上の方からいただいたお中元に対して、すぐに同等の品物をお返しすることは、「贈り物を断る」という意味に捉えられてしまうおそれがあるため注意が必要です。
善意でやったことが、拒絶として伝わる。 「もらいっぱなしは失礼だから」と急いで同じくらいの物を送り返すのは、いちばん避けたい動きです。
正しい順番
①受け取ったらすぐ|お礼状を出す。 大丸松坂屋は「できれば一両日中に、遅くても3日以内に投函」としています
②品物を返す必要は無い|どうしても何か贈りたいなら、時期をずらす
③時期をずらして贈る場合|表書きは「御礼」。季節の挨拶にするなら暑中御見舞・(目上には御伺)
まず連絡、それから考える
生ものや冷蔵品が届いた場合、受け取ったことを早く伝えるのが実務上も大事です。「届いていない」と相手が心配することがあります。電話やメッセージで先に伝え、改めてお礼状を出すのでも構いません。
- 1お礼状を3日以内に出す(電話やメッセージが先でもよい)
- 2品物のお返しはしなくてよいと知っておく
- 3すぐに同額を返さない(断りの意味になる)
- 4贈るなら時期をずらして「御礼」で
もらったら、同じくらいの物を返すものだと思っていました。
それが逆効果になることがあります。 目上の方からのお中元にすぐ同等品を返すと、「受け取りません」という意味に取られうる、と日本郵便が書いています。
じゃあ、何もしなくていいんですか。
お礼状は出してください。 品物は要りませんが、届いたことと感謝を伝えるのは別です。3日以内が目安とされています。
生ものを贈ると、費用を負担するのは贈った側です

常温で日持ちするものが選ばれてきたのには、理由があります
ここは法令の話です。相手が受け取れなかったとき、何が起きるか。
標準宅配便運送約款 第13条・第14条
条文(要旨)
第13条 荷受人が荷物の受取を拒んだとき、若しくはその他の理由によりこれを受け取ることができないときは、遅滞なく荷送人に対し、相当の期間を定め荷物の処分につき指図を求めます。その費用は荷送人の負担とします。<br>第14条 ただし、荷物が変質又は腐敗しやすいものである場合であって、相当の期間内に指図がないときは、荷送人に対し予告した上で、直ちに荷物の売却その他の処分をすることができます。 不足があるときは荷送人にその支払いを請求します。
つまり——
| 起きること | 誰が負担するか |
|---|---|
| 相手が受け取れず、荷物が宙に浮く | 贈った側(指図を求める費用) |
| 生ものなので処分される | 予告のうえ直ちに処分できる |
| 処分しても足りない分がある | 贈った側に請求される |
「相手に届かなかっただけ」では終わりません。 しかも生ものは、返ってすら来ないことがあります。
クール便は、保管日数が通常便より短い
| ヤマト運輸 | 佐川急便 | 日本郵便 | |
|---|---|---|---|
| 通常便の保管 | 7日 | 8日 | 7日 |
| 冷蔵・冷凍の保管 | 3日 | 4日 | 7日(通常と同じ) |
| 置き配 | 不可 | 不可 | 対象外 |
| 宅配ボックス | 不可 | 不可 | 不可 |
| コンビニ受取 | 不可(営業所受取のみ) | 不可 | 不可 |
佐川急便の日数は「営業所受取サービス利用規約」第7条によるものです(通常8日・クール4日・延長不可と明記されています)。
- ヤマト運輸は「クール宅急便は、最初のご不在連絡票のお届け日を含めて3日間です(一部のお品物は3日より短い場合がございます)」としています。
- 日本郵便は7日ですが、「差出人さまがより短い留置期間を設定することもできます」と書いています。
- ヤマトと佐川は保管期間の延長ができません。 日本郵便は「延長できない」と明記した記述を確認できませんでしたが、保管期間内に配達できなければ差出人に返送されます。
高島屋の注意書き(原文)
生鮮品や冷凍食品、アイスクリームなどは、商品特性上や品質管理上、お届け先がご不在の場合、配送所での保管期間が非常に短いため、ご注意ください。<br>——百貨店自身が、この形で注意を出しています。
だから「在宅を確認してから」
日本郵便は「郵送する前に相手の在宅日時を確認しておくことがマナーです」と書いています。マナーというより、実務上の必要です。
- 1相手が受け取れる日を確認したか(旅行・帰省の時期と重なりやすい)
- 2常温で日持ちするもので代えられないか
- 3相手の家族構成に対して量が多すぎないか
- 4相手の冷蔵庫・冷凍庫に入る大きさか
迷ったら、常温で日持ちするものを選ぶ
お中元の定番が油・のり・そうめん・調味料・お菓子だったのには、受け取り事故が起きにくいという理由があります。相手の生活が読めないなら、常温品が安全です。
身に覚えのない荷物が届いたら
お中元の時期は、送りつけ商法と紛れやすい時期でもあります。
決めつけて捨てないでください
国民生活センターは「親族や知人から贈られている場合もあるため、まずは送付元を確認します」「家族が注文した可能性もあります。まずは家族などに心当たりがないか確認しましょう」と案内しています。お中元を送りつけと誤解して処分してしまうのが、この時期の失敗です。
| 送りつけ商法 | お中元 | |
|---|---|---|
| 送ってくる相手 | 販売業者(代金を得る目的) | 個人・知人・取引先 |
| 特定商取引法59条 | 適用される。返還請求できない | 適用されない(販売業者ではないため) |
| 開封・処分してよいか | してよい。支払い義務は生じない | 送付元を確認してから |
特定商取引法59条について
2021年7月6日以降、販売業者が一方的に送りつけた商品は、直ちに処分できます(改正前は14日待つ必要がありました)。消費者庁も「開封や処分を行ったことによって、消費者に支払義務が生じることはありません」としています。<br>ただし条文の主語は「販売業者」です。個人からの贈り物であるお中元には適用されません。 そこを取り違えると、贈り物を捨ててしまうことになります。
「お中元について国が注意喚起している」という事実はありません
念のため書いておきます。国民生活センター・消費者庁に、お中元や贈答を主題にした注意喚起は見つかりませんでした。 実在するのは海産物の電話勧誘・送りつけに関する注意喚起(相談件数は2023年度2,876件→2025年度4,358件と増加)で、これは別の話です。困ったときは消費者ホットライン188(局番なし)へ。
夏だから、ゼリーとか冷たいものを贈ろうと思っていました。
相手が受け取れる日を確認できるなら、いいと思います。 ただ7月・8月は旅行や帰省と重なります。クール便はヤマトで保管3日、置き配もできません。
受け取れなかったら、戻ってくるんですよね。
生ものは戻ってこないことがあります。 約款で「直ちに処分できる」と決まっていて、その費用は贈った側に請求されます。 これは意外と知られていません。
喪中のとき、金額の相場、お歳暮との関係
でも贈れる、とされています
日本郵便の説明(原文)
喪中はお祝い事を避けるべき時期ですが、お中元はお祝い事ではなく日頃の感謝を相手に伝えるためのものなので、いわれにかかわらず贈ったり受け取ったりできます。<br>——ただし、この説明の出所は辞書や公的機関ではありません。 事業者がそう書いている、というところまでしか辿れませんでした。
実務としては、次のようになります。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 紅白の水引 | 避ける。 お中元ののし紙には紅白の水引が描かれているが、祝いを連想させる。無地の紙や短冊にする |
| 四十九日を過ぎていない | 時期を少しずらす(日本郵便自身も「といわれています」と留保しています) |
| 忌明けがお中元の時期を過ぎる | 残暑御見舞・残暑御伺として贈る |
| 忌明け前にもらった | お礼状を先に送り、改めて残暑見舞い・残暑伺いののしをつけて贈る |
自分が喪中でも、相手が喪中でも、考え方は同じ
お中元は感謝を伝えるもので、祝い事ではない——という整理なので、どちらが喪中でも贈れるという説明になります。変えるのは時期と掛け紙です。
金額の相場に、公的な統計はありません
家計調査に「贈答用」という費目はありません。 贈答の支出は「交際費」に入りますが、そこには祝い金や香典といった現金の移転も含まれます。中元・歳暮の内訳は取り出せません。
事業者が公表している目安は、こうです。
| 相場 | 相手(日本郵便による) |
|---|---|
| 3,000円 | 友人・ご近所・同僚、習い事の先生 |
| 3,000〜5,000円 | 家族・親戚 |
| 5,000円〜 | 勤務先の上司、取引先、仲人 |
三越伊勢丹も相手別に3,000〜10,000円、高島屋は「3,000円〜5,000円程度が一般的」としています。どれも各社の記載であって、調査結果ではありません。
「贈っている人」は減っています
統計局が家計調査を分析した記事(2017年公表)によれば、1世帯あたり1か月の交際用購入は1997年の12,259円から2016年の8,879円へ、27.6%減りました。<br>品目別に1985年と2016年を比べると、お中元の定番品ほど落ちています。交際用に買われた割合は、乾物・海藻が24.6%→8.0%、茶類が22.6%→7.3%、油脂が17.6%→6.2%。統計局自身が「お歳暮やお中元、新築祝いなどで贈るようなものでは交際用購入の割合が低くなっています」と書いています。<br>なお「交際用」は贈答用と接待用を合わせたものです。
お中元とお歳暮、片方だけにするなら
| どこが | どう言っているか |
|---|---|
| 三越伊勢丹 | 「お中元とお歳暮、どちらかだけにするのならお歳暮にするといいでしょう」 |
| 大丸松坂屋 | 「1年間の感謝の気持ちを伝えるお歳暮を選ぶといいでしょう」 |
理由は、お歳暮が「1年のお礼」だからです。お中元は「上半期のお礼、夏のご挨拶」という位置づけになります。
「お歳暮のほうがやや高め」は各社一致。ただし根拠は各社の記載だけ
大丸松坂屋は「お中元よりお歳暮の方がやや金額の高い品物を選ぶのが一般的」、高島屋も「お中元よりもやや高めの予算を取るのもよいでしょう」としています。<br>ただし提示している相場のレンジ自体は、お中元もお歳暮も3,000〜5,000円で同じです。「どれくらい高くするか」の数字はどこにも出てきません。統計的な根拠は見つかりませんでした。
由来:道教の「三元」に、盆が重なった
これは俗説ではありません。 主要な事典が一致しています。
| 内容 | |
|---|---|
| 三元 | 上元(正月15日)・中元(7月15日)・下元(10月15日)。 中国の道教の祭日で、六朝末期に定着した |
| 中元の意味 | 人の罪を許す「地官」を祭る日。 善悪を判別する神とされ、贖罪の日とされた |
| 盂蘭盆との関係 | 仏教の盂蘭盆会と混同・習合した(複数の事典が「混同され」と書いています)。日本大百科全書は「お盆と中元との結び付きは中国で古くからあり」ともしており、日本で初めて重なったわけではありません |
贈答の習慣がいつ始まったかは、事典どうしで食い違います
日本大百科全書は「江戸時代はとくに盛んに行われた」とし、世界大百科事典は「近世までは特別な贈答の記録が見られない」「定着し始めたのは一説には明治30年代」「大売出しを催す百貨店等の商業主義も深く影響している」としています。<br>これは対象が違うと考えると整理がつきます。江戸期=盆礼や「生御霊」としての親族・近隣の供物のやりとり、明治期=百貨店を介した現在のような商品の贈答。「贈り物」の意味での初出例を1911年(明治44年)の文献に求める辞書もあります。
「江戸時代の商人の盆の掛け取りが起源」は、裏が取れませんでした
よく見る説明ですが、主要な事典6種のどれにも書かれていません。 学術文献も特定できませんでした。確認できたのはギフト・小売事業者のページだけです。
相手が喪中だと聞いて、贈るのをやめようかと思っていました。
お中元は祝い事ではない、という整理で贈れます。 ただし紅白の水引は避けてください。 無地の紙にしてもらえば大丈夫です。
四十九日前だとどうでしょう。
時期をずらすのが無難とされています。忌明けがお中元の時期を過ぎるなら、残暑御見舞に切り替える。表書きを変えるだけです。
まとめ:始める前に、降り方を決める

迷ったら、物より手紙が確実です
要点をもう一度まとめます。
いちばん大事なこと
- 「お中元」という表書きは、来年も贈るという意味を持つ
- 一度きりの感謝なら、表書きを「御礼」にする。 店で「御礼で」と言うだけ
- そもそも贈っている人は約35%(2022年の民間調査)。多数派ではない
相手
- 公立学校の教職員には贈らない。 東京都のガイドラインは保護者を利害関係者に名指ししたうえで「金銭、物品等を受け取ったりする行為は行わない」としている
- 国家公務員は「利害関係者から」の贈与が禁止(倫理規程3条、例外7つに中元・歳暮は無い)。対象は一般職の国家公務員だけで、仕事のつながりが無い親戚などは通常あたらない
- 贈った側も刑法198条(贈賄)の対象になりうる。ただし対象は「賄賂」=職務に関する対価で、純粋な社交儀礼は当たらない
- 会社が虚礼廃止を公表していることがある。贈る前に確認する
- 迷うなら手紙にする。 物でなければ、この問題は起きない
時期
- 関東7月・関西8月という区分を定義した公的文書は確認できなかった(百貨店・ギフト事業者と日本郵便の通販サイトの説明)
- 分からなければ7月上旬着。関西・九州には少し早いが、「お中元」の表書きのまま贈れる
- 百貨店の受付は5月開始、確認できた範囲では早期特典は6月末まで。 注文時期と到着日は別に決める(受付日は毎年変わる)
- 時期を過ぎたら暑中御見舞、を過ぎたら残暑御見舞(目上には御伺)
- 立秋は8月7日の年と8月8日の年がある。 暦要項では2025年も2026年も8月7日。日本郵便のページは同じ画面で「立秋の前日(8月7日頃)」「立秋(8月8日頃)」と噛み合っていない
もらったとき
- お返しの品は要らない。 「必ず半分返す」という決まりも無い(返すなら半額〜同額が目安)
- お礼状は3日以内(大丸松坂屋)
- すぐに同額を返すと「贈り物を断る」意味になりうる(日本郵便)
配送
- 生ものは戻ってこないことがある。 約款14条で、予告のうえ直ちに処分できる
- その費用は贈った側の負担。 不足分も請求される
- の保管はヤマト3日・佐川4日。置き配・宅配ボックス・コンビニ受取はいずれも不可
- 迷ったら常温で日持ちするもの
喪中・その他
- お中元は祝い事ではないので喪中でも贈れる(ただし出所は事業者の説明)
- 紅白の水引は避ける。 忌明けが時期を過ぎるなら残暑御見舞に
- 片方だけにするならお歳暮(三越伊勢丹・大丸松坂屋)。「お歳暮のほうがやや高め」は大丸松坂屋・高島屋が一致(ただし相場のレンジは同じで、統計的な根拠は無い)
- 身に覚えのない荷物はまず送付元を確認。 特商法59条の対象は販売業者からのもので、お中元には適用されない
最後に
贈答の作法には諸説あり、地域や家によってならわしが違います。この記事は「誰がそう言っているか」を明示することを優先しました。 公的な根拠があるのは、公務員・公立学校の教職員への贈答(倫理規程・刑法・東京都教育委員会のガイドライン)と宅配便の扱い(標準宅配便運送約款)、そして立秋の日付(暦要項)です。それ以外は、事業者の説明だと理解して読んでください。
思っていたより、贈らない選択肢が広いんですね。
贈らないことを失礼だと決めているのは、たいてい自分だけです。統計でも、贈っている人は3人に1人ほど。相手も同じくらいの割合でしか贈っていません。
贈るなら、どう始めればいいでしょう。
「御礼」で始めてください。 それで足りなければ、翌年から「お中元」に変えればいい。逆はやりにくいんです。
贈り物と季節の段取りは、あわせて読むと迷いが減ります。
- のし紙の書き方と水引の選び方 — 蝶結びと結び切り、内のし・外のし
- お歳暮はいつまで? — 冬の対になる行事
- 敬老の日はいつ? — 秋の贈り物。受け取りの話も
- 土用の丑の日にうなぎは高くない — 同じ夏の行事。クール便の受け取りの話が重なります
- 7月・8月に読むものは 7月の一覧 / 8月の一覧 にまとめています



